Japanese
English
総説
下垂体腫瘍に対する経蝶形骨洞手術—その歴史と現況
Transsphenoldal Surgery for Pituitary Tumors: Historical review and present trends
佐藤 修
1
Osamu SATOH
1
1札幌医科大学脳神経外科
1Department of Neurological Surgery, Sapporo Medical College
キーワード:
Transsphenoidal surgery
,
Pituitary tumor
Keyword:
Transsphenoidal surgery
,
Pituitary tumor
pp.7-25
発行日 1984年1月10日
Published Date 1984/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436201769
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I.はじめに
世の中には,思いもかけない偶然な事が重なり,歴史の糸がどこかで操られているようで不思議である.下垂体腫瘍に対する経蝶形骨洞手術(transsphenoidal sur-gery,以下T/S手術と略記)の歴史においても例外ではない.1910年6月4日,Harvey Cushingが,Balti-moreのJohns Hopkins Hospitalで,歴史的な,現在最も普及している,上唇下から鼻粘膜を切除することなく,粘膜下剥離法で鼻中隔を切除し,蝶形骨洞を経てトルコ鞍に到達する方法(submucous sublabial transsep-tal approach)で,初めて下垂体腫瘍の減圧手術を行った同じその日に,Baltimoreから遙か大西洋を越えたWien大学病院で,Oskar Hirschが歴史に残る,鼻腔内から粘膜下剥離法で蝶形骨洞を経てトルコ鞍に到達する方法(submucous endonasal approach)で初めて下垂体腫瘍の減圧手術を行った.しかも,Cushingは1912年にBostonに移り,Hirschも1930年代,Bostonに渡りT/S手術を続けた.
1983年6月4目,場所も同じBostonで第1回の下垂体腺腫国際Symposiumが開催された.この会に出席した著者が,Bostonで6月4日に誕生日を迎えたことも何かの因縁と思い,6月4日とBostonにまつわるT/S手術の歴史を紐解き,現況を見つめてみたい.
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