扉
はてしない進歩のささえ
岩淵 隆
1
1弘前大学脳神経外科
pp.1309-1310
発行日 1977年12月10日
Published Date 1977/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436200732
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中枢神経系,ないし頭蓋脊柱管内の病変,異常を何とかして外科的に治療しようと試みた時代,脳神経外科を独立した専門分野として確立しようと努力した時代もいつしか過ぎ,それまでの労苦もむくわれ,その地歩はようやく自他ともに認められるところまできたのが今日わが国の脳神経外科の姿であるように思える.なるほど,歴史のより長い他の分野に較べれば,脳神経外科医の数は,まだ多いとはいえず,医師国家試験の問題も,外科の一部として出題されてはいるが,主要基幹病院に脳神経外科がないようなことは,もはや考えられもせず,術前の患者達も,一般外科の場合以上の危惧感をもつこともなく,海外の権威ある専門誌,国際学会にも日本人の名がみられないことのほうが珍らしい今日を考えれば,わずか20年前と較べて見ても,まさに昔口の感を深くする.
脳神経外科には何となく進歩の可能性に乏しいような嘆きを耳にしたこともあったように思うが,そのあとの変革の何と目覚しいことであったろうか.19世紀末のある有名な物理学者の言に,物理学は19世紀で完成した.今後は今までの教科書の復習に終わるであろう,というのがあるそうであるが,20世紀に入ってからこそ,驚天動地の進歩がもたらされたのと軌を一にするものがある.もちろん悪性腫瘍の治療となると,結果的には20年前とあまり変わっていないかも知れないが,試みられつつある方法の数と,模索の域を脱しつつあるその構成とを見れば昔日の比ではない.
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