扉
脳神経外科のささえ
松井 将
1
1昭和大学脳神経外科
pp.581-582
発行日 1974年9月10日
Published Date 1974/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436200218
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この分野に携わる者の一員として「脳神経外科」誌の創刊号発刊を心から喜んだのは,まだ昨日の事のように感じられるのに,もう既に1年近くを経過した.その間諸先生方の御尽力によって本誌が益々躍進の途上にある事は御同慶に堪えない次第である.
脳神経外科を語る際,私に大きな影響力を与えているのは,やはりハンブルグ大学脳神経外科に勤務していた時代の事である.特に大学の神経科学教室で開かれる週例の研究会では90歳も半ばを過ぎたNonne教授が,既に70歳に近いPette主任教授をはじめ数多くの愛弟子に囲まれて,談論風発する矍鑠たる姿は,学問の伝統から醸し出される尊厳な雰囲気の中にあって温情に溢れる白髪の哲人にも似て,いつ迄も忘れ去ることのない印象のひとつである.この会にはKautzky教授をはじめ,われわれ脳神経外科からも必ず参加して両者が一体となって進められた.これは,はじめに神経科があって後にこれと並列的に脳神経外科が創設されたという関係もあるが,やはりNonne教授の脳神経外科のあり方に対する構想が深く根底で支配力を持っていた事によるものと思う.すなわち教授は,神経科学の基礎の上に立って,あるいは神経科学の一部門として治療面を担当している,神経系統に外科的侵襲を加える事に関しての学問が脳神経外科の本来の姿であると考えていた.
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