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Ⅰ.はじめに
中枢神経系原発悪性リンパ腫(primary central nervous system lymphoma:PCNSL)は,脳腫瘍全体の3.1%を占め(日本脳腫瘍全国統計1984-2000)21),ここ20年の間で増加している88).その年齢分布をみると70歳以上の症例が28.1%,60歳以上になると61.8%にのぼり,平均年齢も上昇している21).95%以上は非ホジキンリンパ腫で,B細胞由来とされる.しかしPCNSLは,その多様さや稀少さから現在でも診断や最適治療に対する認識に曖昧さが多く残る.
PCNSLの特徴の1つとして,血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)により薬剤の脳内到達に制限があり,また高齢者が多いことで,他臓器のそれに比べて生命予後が不良なことが挙げられる.1994年以降,メトトレキサート大量化学療法/全脳放射線治療(high-dose methotrexate and whole-brain radiotherapy:HD-MTX/WBRT)により生存期間が延長し(Table),現在はそれを基本とした治療が選択されることが多い.本邦で最初のHD-MTX/WBRT 28例の報告では38),全生存期間中央値(median overall survival:mOS)は39.3カ月であった.しかし長期生存者が増えるにつれ,放射線晩期障害としての神経毒性がクローズアップされるようになった.
本稿では,最近のPCNSLの診断および治療の動向について述べ,HD-MTX/WBRTと高次脳機能障害の問題,さらに,rituximabやtemozolomide(TMZ)を用いた治療,自己血液幹細胞移植併用大量化学療法(high-dose chemotherapy and autologous stem-cell transplantation:HD-CT/ASCT)などの開発途中にある療法を踏まえ,現在のところ推奨できる治療法は何か,また,そのなかで再発時に適した治療法の模索,高齢者や免疫不全患者の治療,髄腔内化学療法の可能性などについて述べる.
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