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Ⅰ.はじめに
脳内・脳室内の深部腫瘍に対する顕微鏡下経皮質アプローチでは,一定範囲の皮質切開と白質の牽引により,術野の最終像はしばしば腫瘍径に近い「寸胴型」または「すり鉢型」になる.また皮質切開を小さくし,顕微鏡をさまざまな方向に振りながら「洋梨型」の術野で深部腫瘍を摘出しようとすれば,深い術野の中で自身の手が視軸をふさぐ死角の多い窮屈な手術となり,脳ヘラの過剰牽引による白質の挫滅も起こりやすい.
一方で従来の内視鏡下脳内腫瘍摘出術は,小さい皮質切開でも深部で広角の視野が得られる利点はあるものの,ほとんどは血腫除去術と同じ細径チューブレトラクタを用いて行う生検術,または吸引・減量手術であった.この方法は進入路の侵襲性は低いが十分な術野が確保できず,「軟らかく吸引可能で,出血の少ない,さほど大きくない境界明瞭な深部腫瘍」という,限られた条件を満たす症例でしか有効性を発揮できなかった.
ViewSiteTM Brain Access System(VBAS:本稿ではViewSiteと呼称する)は,この「進入路の侵襲の軽減」と「術野の確保」の両立を目指し,米国Vycor Medical社により開発された太径透明チューブレトラクタである.本邦では2012年に販売が開始され,2013年10月までに国内で約900本が使用されるに至っている.もともとは小児例などでの顕微鏡下手術の低侵襲化を見込んで開発されたものであるが12,13),本邦では早くから内視鏡下手術で取り入れられている.これは透明チューブレトラクタによる内視鏡下血腫除去術が広く浸透していた本邦の特徴が大きく影響しているのであろう.
当院でも,前述の細径チューブレトラクタにおける内視鏡下手術のジレンマを解決できる器具として,2012年5月から積極的にViewSiteを用いた手術を行ってきた.本手術の目的は,「小さい皮質切開,白質の可及的保護」のもと,「内視鏡の特性を生かすことで深部でも十分な視野を確保し」,「顕微鏡と同様の両手操作を行う」ことである.言い換えれば「より間口を狭くし,見る道具を顕微鏡から内視鏡に変えた中で,マイクロサージェリーテクニックを再現する」ことを目的とした手術である.
本稿では,ViewSiteを用いた内視鏡下脳内および脳室内腫瘍摘出術について,手術症例を呈示しながらその実際の手技や注意点,アプローチルートの選択などについて述べたい.
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