書評
イラストレイテッド 脳腫瘍外科学--河本 圭司,本郷 一博,栗栖 薫●編
寺本 明
1
1日本医科大学大学院医学研究科
pp.1173
発行日 2011年12月10日
Published Date 2011/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436101596
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●ScienceとArtが織りなす“脳腫瘍外科学”
東日本大震災直後の2011年3月15日,医学書院から,河本圭司・本郷一博・栗栖薫の3名の先生方の編集による 『イラストレイテッド脳腫瘍外科学』が発刊された.わが国には「日本脳腫瘍の外科学会」という既に定着した学会があるので,この本の名称自体には違和感はなかったが,“脳腫瘍外科学”という名前の成書はこれまでなかったのではなかろうか? そもそも脳腫瘍は,その治療過程において原則として何らかの手術を必要とする.そのため,主な脳腫瘍に関する手術書は数多く出版されてきた.また一方では,脳腫瘍のいわゆる解説書も少なからず入手することができる.
しかし,本書は,“脳腫瘍の手術は脳腫瘍を包括的に理解した上で取り組むべきである”,という編者らの強い思い入れによって制作されている.ちなみに筆者は,下垂体外科を専門としているが,常々下垂体腫瘍を手術する医師は間脳下垂体内分泌学に精通していなければならないと考えている.すなわち,外科医的な発想だけで手術をすると,腫瘍全摘出イコール治癒と考えがちである.下垂体腫瘍の治療体系において手術は確かに重要なステップではあるが,薬物療法や放射線療法,さらには術後のホルモン補償療法などを十分念頭に置いて治療しなければ,患者をトータルに治したことにはならないのである.同様に,脳腫瘍の手術では,単に手術のテクニックという側面だけでなく,術前・術中・術後管理や長期フォローを含めて総合的に脳腫瘍を理解していなければ優れた手術を実施することはできない.そのような編者らのコンセプトが本書を貫いていると思われる.
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