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2010年10月初旬,いまだ雨季のインド最南端のTrivandrum(トリバンドラム)にて,Nair会長のもと第12回インド頭蓋底外科学会(10月7~8日)が開催され,同時にCochin(コーチン)にて,Panikar会長のもと第4回インド日本友好脳神経外科カンファランス(印日友好カンファランス)が10月9~10日に開催されました.印日友好カンファランスは2年ごとに開催され,日本からは北から福島県立医科大学の齋藤清先生,佐久間潤先生,市川優寛先生,筑波大学の松村明先生,慶應大学の河瀬武先生,国立がん研究センターの渋井壯一郎先生,横浜市立大学の川原信隆先生,信州大学から本郷一博先生,名古屋大学からは吉田純先生,若林俊彦先生,夏目敦至先生,愛知医科大学からは高安正和先生,犬飼崇先生,名倉崇弘先生,藤田保健衛生大学から長谷川光広先生,神戸大学の甲村英二先生,広島大学の栗栖薫先生,大阪市立大学の大畑建治先生,そして岡山済生会から中島正明,髙橋健治で参加いたしました.筆者はインド頭蓋底外科学会に6回目の参加となりますが,毎年インド脳神経外科医のパワーとエネルギーには圧倒されてしまいます.彼らは豊富な症例を経験した上に,手術技術研鑽への熱い情熱,積極的かつ流暢な英語力により国外の脳神経外科医との熱心な交流を通して,毎年その手術レベルは年々確実に上昇しています.また彼らは1人で,脳腫瘍,脳血管障害,脊椎疾患など多数の症例の手術を,専門分野に偏ることなくオールラウンドに執刀しており,その知識量とレパートリーの広さには感心せざるを得ません.症例経験の少ない日本の脳神経外科医は,既に遅れをとっている部分もあると実感しました.
インド頭蓋底外科学会において,河瀬先生のanterior transpetrosal approachは既に常識的な手術であり,彼らの技術は非常に高いと思われました.大きなpetroclival meningiomaでも,大変上手にかつ合併症もなく摘出されている症例が,相次いで報告されていました.経錐体アプローチは,もはや河瀬先生,白馬先生の偉大な先駆者の先生方の特殊なアプローチでなく,一般脳神経外科医もマスターすべき必須のアプローチであると再認識されました.日本のよさは,各地方の主要センターで優れた手術を,低い合併症と安い医療費で受けられる特徴がありますので,大学病院だけでなく市中病院に勤務するわれわれのような一般脳神経外科医も,常に向上心と世界に目を向けた姿勢で日々の診療・手術に励むべきであると思われました.学術集会に先立ち,齋藤先生と大畑先生によるlive surgeryは特に印象的でした.齋藤先生はclival chordomaをtransbasal approachで,大畑先生はtentorial meningiomaをretrosigmoid approachで手術されました.両症例とも脳幹にめり込んだ腫瘍で,通常夜中までかかる手術と思われましたが……,お2人とも午後2時には手術終了されたことには驚かざるを得ませんでした.日本のトップリーダーの先生方の手術は,依然世界最高レベルであり,会場にいるインド脳神経外科医たちの賞賛を受けられました.自分も含めて日本の若いドクターは,日本のトップリーダーの先生の手術をぜひ見学すべきであると痛感しました.手術書を読むだけでなく,「百聞は一見にしかず」です.
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