Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
Ⅰ.はじめに
顔面に耐え難い発作痛を生じる三叉神経痛は,視床痛,幻肢痛などとともに「三大疼痛」として挙げられるほど患者が受ける苦痛は甚大である.もとより,感覚器が集中する顔面は知覚も鋭敏であり,四肢や体幹より疼痛に対する感受性は高い.さらに,三叉神経痛は食事や発語など生活動作によって容易に誘発されるため,生命に関わらない病気でありながら,患者は「このままでは生きていけない」と感じるほど深く思い悩んでいることも多い.
それに対して,1970年代にJannetta 12)が根治療法として手術顕微鏡下でのmicrovascular decompression(MVD)を確立し,本邦でも近藤ら15,16),福島ら5)によってその高い治療効果が示され,多くの患者に福音がもたらされた.ただし,長期的な観察での完全治癒率は70~85%程度であり(Table 1)2,15,19,24,29),手術によっても100%治癒できる疾患ではない.また,服薬や放射線治療11)などの選択肢もあり,疼痛の許容範囲は本人にしか判断できないことから,治療の選択に際しては,「痛みに妨げられない生活」を取り戻すための最善の手段を患者ごとに検討する必要がある.
したがって,三叉神経痛はどの治療法に対しても理解を持つ脳神経外科医が積極的に治療に関与すべき疾患と考えられ,2008年の本誌においても,松島ら21)が疾患の特徴と治療の現況について,藤巻4)が解剖を基礎とした手術手技について,林ら11)がガンマナイフ治療と薬物療法について,それぞれ優れた報告を行っている.そこで本稿でも,三叉神経痛の治療が推進される一助となるべく,MVDを実施する際に有用な知見を概説する.
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.