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Ⅰ.はじめに
術中画像誘導手術は,脳神経外科手術において,顕微鏡の導入に続く第2のブレークスルーである.ニューロナビゲーションは,手術中にリアルタイムに位置情報を提供する有用な手術支援装置であるが,術前画像を基にしたナビゲーションは,手術の進行に伴うブレインシフトによりその正確性を失う問題が残された.術中に画像を撮像し,ナビゲーション画像をアップデートしていくことは,ナビゲーション手術を経験した脳神経外科医の共通の要望であった.術中画像を得るには,computed tomography(CT),magnetic resonance imaging(MRI),超音波画像,赤外線装置などが考えられるものの,脳腫瘍手術,特に神経膠腫症例を対象とする場合,その高解像度より,MRIが最も適する.われわれも1999年,Philips社製のmobile CTを導入したが,神経膠腫症例において,残存腫瘍の正確な評価は困難であった.そのため,2006年3月,MRI装置(オープンMRIシステムAPERTO;㈱日立メディコ,東京)とナビゲーション(Vector Vision;BrainLAB AG, Feldkirchen, Germany)一体型手術室を完成し,術中画像誘導手術症例を積み重ねている.MRI手術室における脳腫瘍の外科手術は,術中MRIで腫瘍の摘出度を確認,残存する腫瘍は付随するナビゲーション画像をアップデートして,確実に摘出することで腫瘍摘出率を向上させている.
3次元画像を中心とする手術支援画像の進歩は目覚ましい.名古屋大学附属病院MRI手術室 は,画像解析,画像転送システムを研究している名古屋大学情報科学研究科,放射線技術学科研究室とネットワークされ,術前,術中支援を得ている.加えて,近隣の術中画像誘導手術室(Brain SUITE® Siemens 1.5T MRI system;BrainLAB AG)との間でネットワークシステムを構築し,手術計画を共有化するとともに,術中動画像も名古屋大学附属病院に転送され,手術支援を行っている.われわれは,このようなinformation technology(IT)技術に支えられた未来型ヴァーチャルネットワーク画像誘導手術室を「Brain THEATERTM」と称し,その中で名古屋大学附属病院MRI手術室は,多種多様の手術画像情報を統合し,手術計画を作成するヘッドクォーターの役割も担っている.
術中画像装置がリアルタイムな画像誘導コンピュータ支援手術を可能にした現在,術者の経験,技術に頼らず,人間の手を超えた精密手術操作,人間の眼を超えた画像解析技術の開発が,次の課題となっている.近年,目覚ましい進歩を遂げているロボット技術,3Dヴァーチャル画像技術と術中画像装置を融合させる新しい手術支援システムの開発も進んでいる.
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