糖尿病，急性ポルフィリン症，癌性ニューロパチーに伴う自律神経障害

Autonomic failure in diabetes mellitus, acute porphyria and carcinomatous neuropathy.

はじめに

　全身性に自律神経機能不全を発現する疾患は"autonomic failure（自律系不全症）"の名で総括されている。1988年英国のBannister^2）は，これらの疾患を表1のように分類した。すなわち，大きく内因性のものと外因性のものに分類し，前者をさらに一次性と二次性に細分している。このうち，アルコール中毒のみが二次性全身性疾患と薬物性の双方の中に分類されている。これは，アルコール中毒のさいに発症する自律神経症候がさまざまな病態，病変部位によって生じ，さらに一次性，二次性と複雑にからみ合っていることによるものと思われる。

　本稿では，これらのautonomic failureをきたすものの中から，糖尿病，急性ポルフィリン症，癌性ニューロパチーに基因するものについて概説する。

　This paper concerned with autonomic failure associated with diabetes mellitus, acute porphyrias and carcinomatous neuropathy.

　Widespread involvements of the autonomic nervous system in diabetes mellitus have been generally accepted as common clinical conditions since the latter half of the XIXth century.