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最近,脳移植は神経科学の各方面から注目されている。脳移植は脳の可塑性と神経回路の修復という神経生物学的な問題の解決のためのアプローチの一つとして行なわれているが,一方,脳移植により失われた脳機能を回復するという点からも多くの研究が行なわれつつあり,最近ではより実践的,治療的な目的のために動物実験が行なわれるようになってきた。その意味で,パーキンソン病モデル動物で,ドーパミンニューロンを移植することにより運動異常の回復がみられたことは,難治性神経疾患に対する臨床応用への可能性を示すものとして注目に値する結果であった1)。合成ヘロインの副産物としての1-メチル,4-フェニール1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)がヒトにパーキンソン病を発症させることが判明して2),この神経毒を用いてパーキンソン病を発症させたサルを用いた研究が現在行なわれている。
さらに,この数年間に,スウェーデンやメキシコ,中国,アメリカなどで,パーキンソン病患者に治療を目的とした副腎髄質組織の脳内自家移植が行なわれ,スウェーデン3,4)とメキシコ5)の症例についてはかなり詳細な報告がなされている。このうち移植手術後の症状の回復はメキシコグループのものが最も顕著であるが,その結果の評価についてはかなり議論があるようである6,7)。
Intracerebrally implanted grafts of neural tissues have been reported to promote functional recovery in brain-damaged host animals. However, it is still not clear how such implants exert their functional effects. Nonspecific diffuse release of active substances may be enough to restore defective functions or to provide trophic survival and regeneration of damaged host neurons. On the other hand, there is morphological evidence suggesting that grafted fetal neurons can establish efferent synaptic connections with the host brain and become at least partially integrated into the host neuronal circuitry.
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