連載 保健婦日記
やぶ椿
金本 恵美子
1
1滋賀県安土町
pp.788-789
発行日 1991年10月10日
Published Date 1991/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900321
- 有料閲覧
- 文献概要
折れたコスモス
人には、それぞれに思い出の花とか歌とかがあるように思う。ある花を見ると、必ず思い出すことや、さびしかったり楽しかったりすると、必ず口ずさむ歌があるのではないだろうか。私はコスモスを見ると、十代のころの恋を思い出す。二歳年上のTさんは、コスモスが好きだと言った。二つに折れてしまったコスモスの茎をマッチ棒を副木にしてセロテープでまいて、そおっとコップに挿した。その時のTさんの手つきがなんともやさしくて、私はコスモスにジェラシーを感じた。今でもその時のシーンを思いうかべると、胸のあたりがさわがしくなる。
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.