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I.はじめに
GABA(γ-アミノ酪酸)は植物界・動物界に広く存在するアミノ酸のひとつであるが,哺乳動物の脳にGABAが存在していることが1950年,Roberts,Awapara,Udenfriendら3つのグループの人達によって同時に発見された。それ以来GABAと神経機能との関係を追求する数多くの研究がなされ,現在ではGABAが無脊椎動物,脊椎動物の神経系において抑制性の神経伝達物質として作用することが明らかになっている1)。
30数年にわたるGABA研究の中で,1950年半ばから1960年半ばは主に甲殻類の神経系や神経筋接合部でGABAが抑制性神経伝達物質である証拠があげられた。哺乳動物でのGABAの研究はその神経系の構造の複雑さから解析が遅れ,1960年半ばから1970年半ばの研究によってGABAが哺乳動物の中枢神経系でも抑制性の神経伝達物質として作用していることが明らかになった。GABAが抑制性の神経伝達物質として作用する証拠としては,①抑制性の神経終末にGABAがその合成酵素(グルタミン酸脱炭酸酵素,GAD)とともに存在すること,②電気泳動的にシナプス近傍にGABAを適用した場合,抑制性の神経線維を刺激したときと同様に,シナプス後膜にいわゆるGABA電位が惹起されること,すなわち膜のCl−イオンに対する透過性を増大させシナプス後膜に過分極(脱分極)性の変化を起こさせること,③これらの効果がbicucullinやpicrotoxinなどの拮抗薬によって抑制され,muscimolなどのアゴニストによって増強されること,④抑制性の神経線維を刺激することによってその神経終末からCa++の存在下にGABAが放出されること,⑤GABA作用の不活性化のためその部位にNa+依存性の高親和性のGABAの取込み機構が存在し,細胞内に取り込まれたGABAはミトコンドリァ依存性のGABA分解酵素(GABAトランスアミナーゼ,GABA-T)の分解をうけること,⑥生理・生化・薬理学的にGABA受容体の存在すること,などがあげられている。これらの研究成果を踏まえて,1970年後半から現在にかけてGABA研究の流れには3つの方向があると考えられる。その1つはGABAとCl−イオン(あるいはCa++,K+)チャンネルに関する生理学的な解析であり,patch clamp法を用いてニューロンの単一イオンチャンネルの性質が調べられ(図1),GABAがCl−チャンネルを選択的に活性化することが明らかにされている2,3)。その2は自律神経系を含む末梢神経系および内分泌系におけるGABAの役割の研究であり,心臓,血管系,消化器系,精管,膀胱などのほか膵臓とくにLangerhans氏島,卵巣,輪卵管,子宮ひいては視床下部−下垂体系などにおけるGABAの研究が進められている4)。そして第3にGABA受容体の研究であり,これは最近のGABA研究の主流をなしているように思われる。そこではGABA受容体の生理・生化・薬理学的性質,GABA受容体タンパク質の純化精製などに興味がもたれているが,とくにbenzodiazepine(BDZ)受容体やbarbituratesおよびpicrotoxin,pentylenetetrazolなどの薬物リセプターや結合部位とGABA受容体の関連に注意が寄せられている。本稿ではGABA受容体についての最近の研究動向をまとめることにする。
γ-aminobutyric acid (GABA) is an inhibitory neurotransmitter in the peripheral and central nervous system of mammals and plays an important role in regulating the nervous function. To clarify the function of GABA in CNS, it is indispensable to know the property of GABA receptor localized in the pre- and postsynaptic membrane as well as the releasing mechanism of the neurotransmitter. There are two types in GABA receptor, namely A and B types which were separated according to the sensitivity to the agonist and antagonists.
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