Japanese
English
綜説
わが国におけるSSPEの発生実態
Epidemiology of SSPE in Japan.
上田 重晴
1
,
中尾 亨
2
,
石田 名香雄
3
,
今野 多助
4
,
水谷 裕迪
5
,
福山 幸夫
6
,
佐藤 猛
7
,
磯村 思无
8
,
喜多村 勇
9
,
加地 正郎
10
,
奥野 良臣
11
Shigeharu UEDA
1
,
Toru NAKAO
2
,
Nakao ISHIDA
3
,
Tasuke KONNO
4
,
Hiromichi MIZUTANI
5
,
Yukio FUKUYAMA
6
,
Takeshi SATO
7
,
Shin ISOMURA
8
,
Isamu KITAMURA
9
,
Masaro KAJI
10
,
Yoshiomi OKUNO
11
1大阪大学微生物病研究所感染病理
2札幌医科大学小児科
3東北大学
4東北大学抗酸菌病研究所小児科
5関東逓信病院医用情報研究所
6東京女子医科大学小児科
7順天堂大学医学部神経内科
8名古屋大学医学部小児科
9高知医科大学小児科
10久留米大学医学部第1内科
11大阪大学微生物病研究所
1Department of Pathology, Research Institute for Microbial Diseases, Osaka University
2Department of Pediatrics, Sapporo Medical College
3Tohoku University
4Department of Pediatrics, The Research Institute for Tuberculosis and cancer, Tohoku university
5Research Institute for Medical Information
6Department of Pediatrics, Tokyo Women's Medical College
7Department of Neurology, Juntendo university School of Medicine
8Department of Pediatrics, Nagoya University, School of Medicine
9Department of Pediatrics, Kochi Medical School
10Department of Internal Medicine I, Kurume University, School of Medicine
11Research Institute for Microbial Disease, Osaka University
pp.541-548
発行日 1986年6月10日
Published Date 1986/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431905806
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亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis,SSPE)は稀ではあるが進行性の予後のきわめて悪い小児期および思春期の中枢神経系疾患である1)。感染性遊離ウイルスを産生しえない麻疹ウイルス変異株2)が脳内に持続感染していることが病因であるが,その発病機序には不明なところが多く,有効な治療法はいまだ確立されていない。
今までに行なわれた世界のいくつかの国でのSSPEの疫学調査3〜21)で,各国に共通した疫学的特徴がいくつか明らかにされている。すなわち,低年齢での麻疹罹患とSSPE発病の関連性,麻疹罹患からSSPE発病までの平均数年におよぶ潜伏期,また,女児よりは男児に患者が多いことなどである。しかし,疫学的に最も重要な特徴は米国で系統的に行なわれた調査でまず明らかにされた麻疹罹患後と麻疹ワクチン接種後のSSPE発生頻度の相違であろう。米国では麻疹ワクチン接種後のSSPE発生頻度は麻疹罹患後のそれに比べて1/12であったと報告されている5,13)。この数字の正当性を裏付けるのは,米国の徹底した麻疹ワクチン接種とそれによる麻疹流行規模の縮小に伴うSSPE発生数の減少である5)。他の国ではいまだ米国のような成績は報告されていないが,少なくとも米国の成績をみる限り,100%ではないにしてもSSPEは麻疹ワクチンによって予防できるということが明らかである。
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