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はじめに
脳幹には四肢とくに腕(前肢)に対して,馬の手綱さばきに似た働きがある。緊張性迷路反射,緊張性頸反射はその1例としてあげられる。頭部が躯幹に対してどのような位置関係にあるかによって左右の腕の動きが変わる。すなわち頭部を前屈させると両腕は屈曲し,背屈させると伸展する。外側に曲げるとか,外転させると,顔の向いた方向の腕は伸び,反対側の腕は屈曲する現象である。求心性インパルスの発生する部位は前庭規管であったり,頸椎の上位であったり違うが,現われる腕の動きは同じパターンを示す。これら左右の腕の協調運動は脳幹内で統御され,パターン化された下行性インパルスが脊髄を下行し左右の腕の動きをひき起こすものと考えられる12)。最近,同様のパターン化された脳幹の統御機構が,流れベルト上を歩かせたネコの歩行にもみられ,これら脳幹からの下行性機序は緊張性迷路反射などとも共通しているとみられるので,まず流れベルト上を歩かせた歩行を例にあげて説明し,その後で緊張性迷路反射,緊張性頸反射,交叉性伸展反射についても述べ,最後に随意運動時の脳幹の役割についてもふれたいと思う。
もとより四肢の協調運動には脊髄性機構の関与がまったくないわけではなく,左右の下肢間に働く交叉性伸展反射などは脊髄性機序によって充分説明できる。しかし腕(上肢)の動きなどは必ずしも脊髄性機序のみによっては説明できず,脳幹の関与した機序も加わっている。
It is well known that the tonic neck or laby-rinthine reflexes exhibit patterned movements of the forelimb, e.g. when the head rotate to the left side, the left forelimb is extended while the right forelimb is flexed. These phenomena may be involved in the supraspinal mechanisms. The supraspinal mechanisms are also concerned the stereotyped bilateral forelimb movements in loco-motion.
Several supraspinal mechanisms are known to play a role in locomotion. These mechanisms appear to produce both tonically and phasically descending volleys to the spinal cord.
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