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はじめに
胸腺に内分泌機能があるということは100年以上も前から考えられていたが,明らかなところでは1915〜1921年頃にSalkindあるいはHammerらにより内分泌機能についての仮説が出されていた。その後,OsobaとMillerはmilipore chamberを用い,胸腺の液性因子が胸腺摘出を行なったマウスの胸腺機能を部分的に回復させることができると報告し,胸腺液性因子が注目されるに至った1)。1966年Goldstein, A. L. らによる胸腺抽出物(サイモシン)のホルモン様活性の報告に始まり,種種の胸腺ホルモンといわれる物質が明らかにされてきた2)。広義の胸腺液性因子にはGoldstcin, A. L. らによるサイモシン,TraininらによるTHF(thymic humoral factor)3),Goldstein, G. らによるサイモポイエチン4)に代表される胸腺組織抽出物,血中に存在する因子(Bachによるfacteur thymique sérique,FTS)5),あるいは胸腺上皮細胞培養上清中の因子が含まれる。これらの因子の生物活性を文献上より調べてみるとその作用はそれぞれ多少異なっている。とくに研究が進んでいるサイモシン,サイモポイエチン,THF,FTSの4種のいわゆる胸腺ホルモンの作用,胸腺における局在などについて表1に一括した。また胸腺上皮細胞培養上清中の一般的生物活性についてはすでに綜説として報告したので参照されたい6)。
本稿では重症筋無力症(以下MG)と胸腺液性因子(ホルモン)との関係についてのみ述べるが,とくに,1)MG患者の血中の胸腺ホルモン活性の測定の意義,2)MG患者胸腺の組織培養ならびにその上皮細胞の変化,機能的意義,3)いわゆる胸腺液性因子のMGの病因,病態に及ぼす影響,について考察するにとどめた。
We discussed about the significance of measurement of thymic hormone activity in blood from myasthenia gravis patients, Immoral factors produced by thymic epithelial culture, epithelial growth, epithelial charactor and functional activities of thymic epithelium from myasthenia gravis, and effects of thymic hormone or thymic humoral factor on the pathogenesis of myasthenia gravis.
In childhood myasthenia gravis there may be two independent serum factors; one an IgG antibody, and the other an thymus factor that induces T-lymphocyte maturation (Short et al.).
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