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I.はじめに
胸腺はT細胞が分化成熟をとげるために主要な働きをする器官である。このためTの分化成熟に必要な微環境が胸腺内に備わっているものと考えられる。そのような微環境は,stromal cellsとlymphocytesの直接interaction(lympho-stromal interaction)によって構成されていたり,ある種のstromal cellsからリンパ球へとparacrine的に産生される液性因子から成り立っている。骨髄から胸腺に移行してきたpre Tは胸腺内微環境のプログラムに従ってmatureなTへと分化していくものと考えられている。胸腺液性因子は子牛胸腺などから抽出精製され,thymosinのようなホルモン様因子をはじめとする20数種類もの報告がなされている1〜5)。また胸腺の不溶性画分中にはマクロファージなどで処理することによって活性の認められる因子が存在することも知られている6)。近年,胸腺液性因子産生細胞の同定のためや,ごく微量産生される因子についての研究のために胸腺内non lymphoid cellsの培養が行なわれ,そこから特定細胞のクローン化や,選択培養が行なわれている。このようにして得られた細胞の培養上清や精製因子などを使ってpre T→mature Tへの分化成熟段階のどの段階にどの細胞のどのような因子が関与しているのか明らかにされつつある。その結果これまで,epithclial cellsとphagocyticなマクロファージなどがpre T→mature Tへの分化増殖などに深くかかわっていることが指摘されてきた7,8)。このように胸腺はTcellの分化成熟に関与した細胞群と,それらによって支えられる,pre Tからmature Tにいたるリンパ系群から成り立っているが,この他にも胸腺はhcmopoicticな系や骨格筋様細胞(myoid cells)を含有する器官であることが知られている9)。とくに胸腺内の骨格様細胞についてはその生物学的意義はまったく判っていないのが現状である。本稿では最近筆者らがmyoid cellsの胸腺内での役割の可能性について得た結果を論じる。
Thymic myoid cells have been described in the thymus of many vertebrates. However, little is known about their biological significance. Inorder to elucidate their possible biological involvements, we cloned several different types of cells with muscle features from the rat thymus. These cells produced in a culture medium several biological activities such as a colony stimulating factor and an interleukin 1 like activity which supported the growth of monocyte-macrophage lineages and T cell lineages, respectively. The myoid cells also produced a heparin-binding lymphocyte growth factor during myogenesis.
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