今月の主題 リンパ組織の基礎と臨床
リンパ組織の主な病気
胸腺腫と胸腺腫脹を伴う疾患
土屋 雅春
1
1慶大内科
pp.1256-1257
発行日 1976年9月10日
Published Date 1976/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206741
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永らく,胸腺は腫瘍として周囲器官を圧迫する胸腺腫などの時に,また,胸腺リンパ体質という言葉の上でのみ臨床家の注目を浴びていたにすぎなかった.しかし,今やBurnetのいう,thymus-dependent systemの異常を有する疾患群との関連において考える時代になっている.とはいえ,臨床においてどのように理解していけばよいのか,迷う医家も少なくないと思われる.日常臨床で胸腺異常を疑う場合,細胞性免疫異常が想定しうるときはもちろん,血清蛋白,循環抗体,リンパ球(T細胞,B細胞),PHAテストなどの異常を同時に見出す時には,その個体は胸腺を中心にしてなんらかの免疫異常過程が生じていると考えられる,まず,胸腺異常のみられる疾患を大別すると,①自己免疫疾患との関係,②免疫不全症との関係,③腫瘍との関係,④内分泌腺との関係に分けることができる.
形態学的に胸腺の異常をとらえる方法として,通常の胸部X線撮影法では不可能に近く,胸腺腫や乳幼児の胸腺肥大の時以外はX線的に見出すことは困難である.しかし,縦隔充気X線撮影法により,その大きさ,輪郭,X線密度の差から異常の有無を診断することが可能である.とくに,胸腺腫の早期発見(occult thymoma)になくてはならない方法である.さらに胸腺の組織診は,吉松により確立された経胸骨上窩胸腺生検,摘出法により可能である.
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