Japanese
English
特集 てんかん研究の現況
序説
Prologue
清野 昌一
1
Masakazu Seino
1
1国立療養所静岡東病院(てんかんセンター)
1National Epilepsy Center, Shizuoka Higashi Hospital
pp.531-532
発行日 1983年8月10日
Published Date 1983/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431905514
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Jackson, H(1873)は,「てんかんは,偶発する,突然の,過剰な,一過性の,灰白質の局所発射の総称である」と述べた1)。その考えによれば,てんかんの発作症状はいかに多様であっても,その生理学的性質は共通であり,脳灰白質の一局所に起こる急速で激しい細胞発射にほかならない。この細胞発射が灰白質のどのような部位に発現し,どのような神経系内を伝播するかによって,さまざまな発作形態が発現する。それゆえ,てんかんを発作形態から記述し,定義することは無意味なのである。てんかんを臨床的に定義しようとすると,まず発作の形態をもれなく包括することで蹉跌をきたす。このような現象的定義の矛盾や困難は,Jacksonの洞察によって,新しい活路を与えられたと同時に,さらに重要なことは,てんかんの脳過程が,細胞発射の異常という共通の障害を持っていることが予見されたことである。かくして,てんかんは,固有の脳障害を持つ疾患として積極的に方向づけることが可能となった2)。
この「灰白質の発射」は,Jacksonにあっては単なる抽象的な概念にとどまっていたが,これを眼で見ることのできる電位変動の記録としてとらえたのはBerger H.(1933)であり,Jacksonの予見から60年の年月が経過した後のことである。しかし,こんにちJacksonの論述を仔細に読み返すと,彼は「発射」が電気現象と見抜いていたと思われるふしが多く見出される。
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