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特集 神経疾患の動物モデル
特集「神経疾患の動物モデル」に寄せて
Introductory remarks
松下 宏
1
Hiroshi MATSUSHITA
1
1和歌山県立医科大学第二生理学教室
1Department of Physiology, Wakayama Medical College
pp.837-838
発行日 1979年10月10日
Published Date 1979/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431905096
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- Abstract 文献概要
近年,ヒト疾患のモデル動物は慢性の成人病や遺伝性難病あるいはがんなどに対処する現在の医学研究にとって不可欠なものとされ,より優れたものの開発と利用がわが国でも次第に盛んになりつつある。モデル動物には大別して人為的につくられた実験的発症モデル(artificially induced model)と家畜や実験動物に天然にみられる自然発症モデル(spontaneous model)とがあるが,今日重要視されているものはもちろん後者の方である。
遺伝性疾患の究明に突然変異体などの遺伝子欠損動物がモデルとしてかけがえのないことはいうまでもないが,慢性の代謝異常疾患などの場合も同様に自然発症モデルの必要性がきわめて高い。なぜなら,これらの場合,病気の進行過程で生体の適応代償作用が働いて病因とその結果が連鎖反応的に繰り返されることが考えられる。そのため,この両者を区別することは多くの場合きわめて困難となり,単なる想定に基づいた不自然な方法によって実験的に強引に作成されたモデルは,たとえ病態が酷似していたとしても,それらはヒト疾患に対してまるで似て非なるものであることが多いのである。すなわち,これらヒト疾患の病因や根本的治療の追求のための研究材料としては自然発症個体そのもの,あるいはそのような疾患の発生を遺伝育種学的に固定した系統動物を用いるのが最適となる。
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