特集 神経学における最近の研究
<病理>
Creutzfeldt-Jakob病;病変の伝達とslow virus infection
生田 房弘
1
1新潟大学脳研究所神経病理
pp.750-752,759
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904919
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1.伝達実験の歴史
ウイルス粒子も,ウイルス感染らしい組織像も現象もみられないのに,ある種の病的組織を移植することで,ある病的状態がtransmission伝達する疾患;slow virus infectionという概念の出現は,神経学の分野でも過去10年間の大きな出来ごとの一つといってよいであろう。
1966年,GAJDUSEKらはニューギニアのヒトKuru病脳組織を,初めチンパンジーの脳内などに移植し,長い1.5〜2.5年の潜伏期ののちKuruが伝達されたという歴史的な報告8,9)を行なった。次いで,GIBBS, Jr. らは1968年,ヒトのCreutzfeldt-Jakob病(C-J)*註脳病変も移植で伝達したことを報告12)した。ヒトのKuruもC-Jの脳もともに光顕下でみると,spongy degenerationが著しいastrocytosisを伴って広範に皮質に認められるほか,PAS陽性の星状形のKuru斑が主としてKuru例で認められる。伝達されたチンパンジーのそれはspongy degenerationとastrocytosisのみからなっている16)。
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