特集 神経学における最近の研究
<生理>
言語と聴覚
勝木 保次
1
1生物科学総合研究機構
pp.666-667
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904886
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私が聴覚機構の研究をするようになった動機を考えてみると,誠に不思議な気がする。私が生理学教室に入る決心をしたのは,もちろん生理学に興味をもったことにもよるが,それ以上橋田邦彦先生の人格にひかれたためで,医学部を卒業した際(1931),教室にいれて戴くようにお願いにいったら,当時は生理学を一生やることは仲仲困難で,途中挫折した際困らぬように臨床をやってから来るようにいわれ,その頃最も早く一人前になれると考えられた耳鼻科と眼科を選び,結局耳鼻科に入局したのであった。入局してみると耳鼻科に関係ある生理学はHELMHOLTZの説だけで,実験的証明はまだ何もない状態であった。それで聴覚機構の研究を始める決心をしたが,どうしたらよいか全然見当がつかなかった。たまたま耳鼻科に颯田琴次先生がおられ,人間の音声の研究を始められたところであったが,この研究は音楽が基本で,その見地から人の声を研究しようというので,音楽の素養のない私には仲々ついてゆけなかった。
生理学教室では橋田先生が新しい音響分析器ができたので,これを使って人の母音の解析を行なうことになり,時実利彦君と二人でその助手をつとめることになった。
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