特集 神経学における最近の研究
<生理>
大脳皮質の機能的構造
酒田 英夫
1
1東京都神経科学研究所神経生理学研究室
pp.664-665
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904885
- 有料閲覧
- 文献概要
1977年夏,パリの国際生理科学会議の中で「感覚野の機能的構築」というシンポジウムが開かれた。これはMOUNTCASTLEが機能的円柱(functional column)の仮説を発表してから丁度20年目にあたる。この席でT. N. WIESELはdeoxyglucose法で視覚野の方向性コラム(orientation column)を染め出した見事な研究を発表した。この20年間,大脳皮質の機能的構造に関する研究は微小電極法を武器として,機能的円柱という中心的なテーマをめぐって展開されたが,この発表はそれを形態学的に証明する時代が来たことをはっきり印象づけた。
20年前までは表面電極による刺激と記録の時代で,FRITSCH,HITZIG(1870)にはじまる運動野の体部位局在の研究といいADRIAN(1941)とWOOLSEYら(1942)による体性感覚野の体部位局在の研究といい,またTALBOTとMARSHALL(1941)による視覚野の網膜部位局在の研究といいすべて大脳皮質の平面的なプランを明らかにしただけで,深さの方向に何か意味のある配列があるという考えはほとんど浮んでこなかった。1957年にMOUNTCASTLEらは閉鎖式脳固定法(closed chamber)と金属微小電極を使ってネコの体性感覚野で安定した単一ニューロン活動を記録することに成功し,自然刺激を使って受容野と受容器の種類を系統的にしらべた。
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.