Japanese
English
綜説
聴覚とその神経機構
The Neural Mechanism of Audition
勝木 保次
1
1東京医科歯科大学
1School of Medicine Tokyo Medjcal and Dental University
pp.149-168
発行日 1958年3月1日
Published Date 1958/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200650
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前おき
橋田先生の記念講演会について最初話を聞きました時は,私などは橋田先生の門下として最も若い方であり,多数の先輩がおられる事ですから辞退申上げたのでありますが,強つてというお話で何かお考えでもあることと思つて,お引受けしたのであります。私が生理学教室に入りましたのはもう先生が退官される極く真近かでありました。教室に入りましてから僅か数年で先生は一高に行かれ,その後は戦争になり我々も亦戦地に動員されましたが帰つて参りました時は先生が既になくなられた後だつたのです。しかし私が2〜3年の間でも先生から直接教えを受けられたということは,自分の一生にとつて非常な幸福だつたと思つております。教室に入りました当時先生は日本語母音の解析をやつておられ,それを手伝つております中に戦争になり,その後戦地に行つたり,帰つたりし乍ら研究を続けておりました。そして或る程度の結論を得た事は得たのでしたが,我々がどうして聞くかということが解らない限り,どうにも問題は解決しないと考える様になりまして,それから今日お話しようという聴覚機構の研究を始めたのであります。
本川教授も先からお話になりましたように感覚生理というものはどうあるべきか,ということを我々が教室におります時によく論議致しました。現在自分がやつております方向が果して正しいかと云いますと,自分に正しいと思えても考え様によつてはそれが感覚生理でないと云う方もありましよう。
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