Japanese
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特集 失語症研究カンファレンス
病理学からみた失語症
Aphasia from the View Point of Pathology
松山 春郎
1
,
仲村 禎夫
2
,
竹田 契一
3
Haruo Matsuyama
1
,
Sadao Nakamura
2
,
Keiichi Takeda
3
1慶応義塾大学医学部病理学教室
2慶応義塾大学医学部精神神経科学教室
3伊豆韮山温泉病院スピーチ・リハビリテーション・クリニック
1Department of Pathology Keio University, School of Medicine
2Department of Neuropsychiatry, Keio University School of Medicine
3Speech Rehabilitation Clinic, Izu Nirayama Rehabilitation Hospital
pp.217-222
発行日 1971年6月30日
Published Date 1971/6/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904712
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失語症の臨床病理学的研究には種々なる困難が伴う。もともと形態学は神経症状と比べて精神症状の解明には,あまり貢献してはいないが,この際現在の線維解剖学により理解されているところにしたがつて,臨床的に詳細に検討された各症例を,その症状と対比しつつ,比較して行く他ないであろう。しかしroutineに整理された症例は,細い分析に役立たない。臨床カルテには,忠実に症状が記載されていることは少なく,病理所見についてもその病巣の局在に関する記載が不充分であることが多い。普通失語症そのものは、基礎疾患の診断には関係ないので,特別の関心が持たれない限り,検索は等閑にされがちである。この研究には特別なチームが形成される必要がある。
失語症は,脳血管障害による頻度が一番高い。言語に関するセンターは中大脳動脈流域下にあるからである。この場合,しばしば殆ど同時期に,また異つた時期に,多発病巣をつくることもあり,一見,大病巣と思われるものも,実はいくつかの小病巣の集合したものであつたりする。病巣が古くなると,発生時期の新旧をつけ難い点など,剖検例よりの機能の局在の判定は難しいことが多い。次は腫瘍によるものである。星状膠細胞,特に膠芽細胞腫は,前頭,側頭葉に多いが,剖検時には広はんな部分を占めていることが普通である。
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