Japanese
English
研究と報告
精神分裂病の経過と転帰に与える薬物療法の影響
The Effect of Psychopharmacotherapy on the Prognosis of Schizophrenia
武正 建一
1
,
保崎 秀夫
1
,
浅井 昌弘
1
,
仲村 禎夫
1
,
岡本 正夫
2
,
村上 圀世
3
Kenichi Takemasa
1
,
Hideo Hosaki
1
,
Masahiro Asai
1
,
Sadao Nakamura
1
,
Masao Okamoto
2
,
Kuniyo Murakami
3
1慶応義塾大学医学部精神神経科学教室
2陽和病院
3久里浜病院
1Dept. of Neuropsychiat., Keio Univ. School of Med.
2Yowa Hospital
3Kurihama Hospital
pp.617-625
発行日 1973年6月15日
Published Date 1973/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202033
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I.まえおき
近年精神分裂病の経過や転帰に種々の変化がみられていると指摘されている。これには時代的背景14),社会復帰への努力を含めた病院内看護の改善,そして治療手段の進歩などの影響があげられている。しかし,これらの中でもとくに治療手段の進歩は大きな役割を演じているようであり,精神分裂病全般の予後の改善がすべて近代的治療に帰せられるかどうか決定的なことはいえないにしても2),近代的治療,ことに向精神薬療法を中心とする身体的治療の進歩が精神療法的接近や社会復帰活動を進め,さらにこれらとの相互作用の結果が予後全般に変化を与えつつあるとみることはできるであろう。
分裂病に対する向精神薬療法を中心とする身体的治療の影響については,経過,病像,転帰などについて最近多くの発表がなされており,波状,相性の過経を示すものの増加6,24,27),緊張病症状の減少,転帰の上での改善などがあげられている13,19,20)。しかし,また一方では長期の経過を追跡した場合,転帰の上ではさほど影響がみられないとする研究者もあり5,14,16),とくに分裂病の中でも従来から認められている慢性で不良の経過をとり痴呆化(荒廃)への傾向を示すような群については向精神薬をはじめとする種々の身体的治療によってもほとんど影響がないとする見方もある7)。
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