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〔2〕嗜眠性脳炎についての新知見
Neue Beiträge zur Encephalitis lethargica
萬年 甫
1
,
萬年 徹
2
,
豊倉 康夫
2
1東京医科歯科大学第三解剖
2東京大学医学部神経内科
pp.432-438
発行日 1967年8月25日
Published Date 1967/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904419
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われわれは1917年の前半,ウィーンの精神科で,当時ウィーンにはインフルエンザ流行があつたわけでもないのに一連の脳炎患者を観察した。症例の大部分は眼筋麻痺を伴う特有の嗜眼状態(Schlummersucht)の病像のもとに経過するので,私はこれを嗜眼性脳炎(Encephalitis lethargica)どよぶべきものと信じた。症例はウィーンの精神神経学会で供覧され,ついでWiener Klinischer Wochenschrift,917,Nr. 19に予報として発表されている。そのとき,私はつぎのように述べておいた。「これは概して緩慢な経過をとる一種の嗜眠病であるが,初発症状は普通急に頭痛や悪心をもつて始まり,軽度の髄膜症状を呈する。ついで嗜眠状態が加わるが,これはしばしばつよい譫妄を伴う。患者はこの状態から容易に覚醒し,かなり秩序だつていろいろなことをしらせたり,情況を正しくとらえたり,命じられたことを正確に行なつたり,起立歩行ができたりもするが,放置しておけばふたたび嗜眠状態におちいつてしまう。この誰妄嗜眠状態は急速にすすむが,あるいは数週数カ月の経過ののちに死の転帰をとるか,あるいは単なる睡眠から深い昏蒙ないしは昏睡にまで及ぶ意識混濁の深さが時間単位,日単位あるいはもつと大きな振幅で変動,しながら譫妄嗜眠が数週間ないしは数カ月間終始変わらず継続するか,ないしはしだいに快方に向かう。
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