特集 第7回神経病理学会
一般演題〔1〕〜〔102〕抄録・討論
〔80〕〜〔89〕循環障害
〔80〕脳組織とくに浮腫脳中の血清蛋白について—螢光抗体法による研究,他
松岡 竜典
1
,
諏訪 紀夫
2
,
染田 邦幸
3
,
景山 直樹
3
,
半田 肇
3
1京大精神
2東北大病理
3京大脳神経外科
pp.811-816
発行日 1966年12月25日
Published Date 1966/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904383
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Klatzo et al.が記載したcold injury法により脳浮腫をイヌに作製し,脳組織内の血清蛋白を,螢光抗体法により調べた。正常脳には,血清蛋白は,血管腔内以外には,非常に少量しか存在しない。脈絡叢の間質には,脳実質と違つて,非常に大量の血清蛋白が存在する。脳浮腫が起こると,血清蛋白が組織内に大量に存在するのがみられ,脳浮腫が非常に強いところでは,脳の構造に無関係にdiffuseに血清蛋白が分布している。浮腫脳周辺部では,血清蛋白は,gliaの細胞内およびその突起に関係したところに多くみられるようである。また膨化したaxonの中にも,血清蛋白の存在が示された。さらに,血管の周囲にも血清蛋白が大量にみられ,脳浮腫のさいに,血清蛋白を大量に含んだ液が,血管周囲に貯瘤することを示しているものと思われる。以上は,イヌにおける実験的脳浮腫のさいの所見であるが,脳腫瘍摘出中に,急激に脳が腫脹してきたさいのヒト,急性脳浮腫について,血清アルブミンの分布を調べたところ,イヌの実験的脳浮腫のさいとほぼ同様の所見を得ることができた。この浮腫脳には,血清アルブミンのみならず,その他の血清蛋白もまた,大量に脳組織内に存在するものと思われる。
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