Japanese
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特集 脳のシンポジウム
主題 脳と行動
代謝異常と脳の機能障害
Metabolic Disorders and Functional Distuabance of the Brain
柿本 泰男
1
Yasuo Kakimoto
1
1大阪大学医学部精神神経学教室
1Department of Psychiatry, School of Medicine, Osaka University
pp.480-483
発行日 1966年10月25日
Published Date 1966/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904326
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I.神経化学の問題点
脳の生化学は一般生化学の進歩にともない最近めざましく進歩し,生化学や精神神経病学関係の学会や雑誌をみてもその量的比重はますます増加しつつある。多くの生化学者がその研究対象として脳に目を向け,一方では臨床医学教室でも原因不明の脳神経疾患の病因解明を生化学的研究に期待し,広範囲の研究が展開されつつある。しかしこれまでの神経化学の研究法は他の組織や生体に用いられた方法の模倣にすぎないものが多く,脳機能が化学的に解明されうるという作業仮説そのものは正しいとしても、現在の方法論をとる生化学的研究の拡大が脳機能解明へと導びくものであるとは考えがたい。また神経化学の分野では多くの研究の中には論理的に飛躍した無批判な研究が横行し,それらは疾患とか機能とむすびついた研究の中にとくに多く,あたかも神経化学の先駆的な役割を演じているかのごとき誤解を生ぜしめるものもある。そこには脳機能というきわめて困難な研究対象に対する無理解さ,あるいは安易な考え方が作用しているように思われる。
神経化学の困難さの中には脳の構築の複雑さ,生理作用の多様さと速さとか種々のかなり具体的に指摘しうる問題も多いが,さらに大きな問題はその研究対象の不明確さがあるように思われる。
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