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特集 第6回神経化学懇話会
シンポジウムIII/脳の脂質
脳イノシトールリン脂質代謝とイオン輸送の関係—イオン環境変化の脳リン脂質代謝に及ぼす影響について
Effect of Ion Environment on the Metabolism of Phospholipids in Brain Slices
林 浩平
1
,
中村 勇
1
,
甲斐 睦興
1
,
山添 三郎
1
Kohei Hayashi
1
,
Isamu Nakamura
1
,
Mutsuoki Kai
1
,
Saburoi Yamazoe
1
1群馬大学医学部生化学教室
1Dept. of Biochemistry, School of Medicine, Gunma Univ.
pp.535-538
発行日 1964年7月25日
Published Date 1964/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904107
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フォスファチジン酸およびイノシトールリン脂質の代謝回転が高いことが脳のリン脂質の代謝の特徴として広く知られている。とくにフォスファチジン酸は主にHokinらの一連の業績によつて,分泌,膜を通してのイオン輸送のcarrierとして注目されるようになつた。しかし脳フォスファチジン酸への32P組入れはin vitroの実験では極めて高いが,生体内ではそれほど高くない。一方イノシトールリン脂質への32P組入れは生体内においても極めて高いこと,およびフォスファチジン酸よりもイノシトールリン脂質がイオンの輸送と密接な関係をもつことを暗示するその他の事実1)−4)から著者らはイノシトールリン脂質に注目して,イオン環境を変化させた場合の脳切片リン脂質代謝を観察した。
切片をNa-free Ringer液に入れると細胞内Kイオン濃度は急速に低下するが,Naイオンの多い通常のKrebs Ringer液にもどすと細胞内Kイオン濃度は正常なレベルに回復することおよびouabainがこの回復を阻止することが知られている。著者らはこのような条件で作り出されるイオン輸送が活溌に行なわれていると考えられる状態の脳切片リン脂質代謝を観察して,イノシトールリン脂質代謝とイオン輸送の間に極めて密接な関係があることを示す結果を得たので報告する。
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