Japanese
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特集 小児神経病学
精神薄弱の臨床
Mental Deficiency from Clinical View Point
小林 提樹
1
Teiju Kobayashi
1
1日本心身障害児協会
pp.341-348
発行日 1962年7月25日
Published Date 1962/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903966
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精神薄弱の定義
この定義は,時代により,また国により異なつている。WHOがとつている定義は「精神能力の一般発達が不十分なもの」であり,英国では「原因は先天性であれ,疾病または傷害であれ,18歳前に起つた精神発達の遅滞または不完全の状態をいう」と定義し,米国では「知的発達が出生時からあるいは幼少時からおくれている者,その年齢に比して自己や自分の仕事に関して十分な統制,判断および思慮を欠いている知的,社会的能力の標準以下の者,その生涯の中に自己あるいは社会の安寧を欠くために監視・指導・注意あるいは管理を必要とする者,かかる者の状態をさす」といつている。わが国では「いろいろの原因で精神発育が恒久的に遅滞し,このために,知的能力が劣り,自己の身辺のことがらの処理および社会への適応が,いちじるしく困難なものをよぶ」と文部省が定義している。
わが国の文部省の定義は,教育行政の上から定められたものであるので,私たち医学するもの,とくに小児を対象とする立場のものにいたつてはいつそう,適切でないものを感ずる。もともと,精神薄弱とは,社会学・経済学・刑法学・教育学などの立場から提唱され始めたものであつて,それを客観的に取りあげたのが心理学であり,そして最後にこれを医学的にどう老えるかと,私たちに尻を持ちこんできたようなものである。こんな経過からも想像されるように,当然,精神薄弱は医学的にもきわめて複雑である。
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