Japanese
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特集 小児神経病学
トキソプラスマ症
Toxoplasmosis
瀬長 良三郎
1
Ryozaburo Senaga
1
1慶応大学医学部小児科
1Dept. of Pediatrics, School of Medicial Keio University
pp.279-288
発行日 1962年7月25日
Published Date 1962/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903963
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緒論
トキソプラスマ症はToxoplasma gondiiの感染によつて起る伝染性疾患で,1908年Nicolle,Manceauxがそれを始めてやまあらしの一種(Ctenoclactylus gondii)から分離した。それ以来令世界に普く本病原体はひろがり侵淫していることがわかつてきた。元来本症はJirovec20)21)のいうように,動物の間で伝染を示す疾患すなわちZoonoseと考えられている。そして人間にいろいろな面で関係をもつている諸動物間で発生していたものが,なんらかの感染経路で人間に伝搬される。この点Westphal33)は犬が重要な感染源と考えたが,さらに最近豚の本症が重要視され,豚肉をよく調理しないで食すると甚だ危険であることがWeinman, Chandler9)Wright38)らによつて強調されている。かくして人間では先天性感染症の場合はまず母親が感染をうけて経胎盤的に胎児に移ることにより,また後天性感染症の場合は直接に虫体が生体に侵入することによりそれぞれ発症する。人間では始め1939年Wolf, Cowen, Paige37)らが先天性感染と考えられる脳水腫患児の症例を報告してその髄炎から虫体を分離し,Janku19)は小児の眼から見出し,1927年Magarinos, Torres32)は本虫体は好んで神経系を侵襲するものであることを強調した。
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