メディカル・ボックス
トキソプラスマ症—その知識と正しい保健指導のために
吉村 裕之
1
1千葉大学医学部
pp.52-54
発行日 1965年11月1日
Published Date 1965/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203083
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その2
トキソプラスマの感染源とその経路
前号において筆者はトキソプラスマという原虫およびこれによってひき起される不幸な病状や病害性についてのべ,ことに産科領域においては極めて実際的かつ重要な疾患であることを種々の角度から解説した.そこでここではどのような感染源から,どのような経路で人に感染するであろうか.こうしたすでに述べられた事柄以外の点についてふれてみたい.先天性感染は,前述のごとく母体の感染からはじまり,胎盤を介して胎児に移行する.他方後天性感染についてはいろいろのことがあげられている.成人が実験室で感染することはすでにのべた.家庭での愛翫動物ことに犬や猫との接触--この場合その動物がトキソプラスマをもっている--あるいは虫体が蠅や油虫(ゴキブリ)などの昆虫を介し,ことにトキソプラスマを蔵している牛や豚の肉を十分熱を通さず食卓に持ってくる場合,家族は知らずして口を通して感染するという可能性が十分ありうる.時には食肉業者が口からあるいは手指に小さな創があって,そこから原虫が侵入するという実験的根拠も明かにされている.ここに犬や牛肉または豚肉などからトキソプラスマが感染するという報道が生まれる.わが国では,このように犬や猫をはじめ牛,豚,山羊,兎,野ネズミ,ヒツジ,ニワトリあるいは小鳥にいたるまで広くトキソプラスマ感染がみとめられている.
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