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Ⅰ.緒言
Diphenylhydantoin(D-H)が開発されてすでに36年余になる1)が,その大量持続投与が急性小脳失調を来たすことは開発当初より指摘されていた2)。しかし当時は単に大量投与に注意すれば小脳症状も可逆的であり,成人1日量0.4〜0.6gまでの投与は可能とされていた3,4)。しかし16年前頃よりD-H中毒で非可逆的小脳実質変性の起ることがわかり5,6,7),また個体の条件(肝障害,先天酵素欠損,他薬剤による代謝干渉その他)によってはD-Hに対する低耐性化を起すので,治療管理上D-H血中値測定が必要8,9,10)で,投与量も男子1日0.3g,女子0.25g以上は注意を要する11)といわれるようになった。したがって1960年代初期までは急性中毒の臨床・剖検報告も多かった12〜15)が,以後,D-H大量持続投与による急性中毒は激減した。しかし背景に多彩な精神症状を合併している難治てんかんでは中毒症状の把握が困難である場合が多く,かかる症例では中毒症状の発現が急性中毒にくらべ緩徐であることから次第に慢性に経過して重篤な小脳実質のび漫性変性を起すことがある16〜18)。われわれは,このような慢性D-H中毒の2症例を剖検したので,その臨床・病理所見を述べ,小脳症状を中心に考察を試みた。
Two cases of chronic diphenylhydantoin intoxication were examined clinically and pathologically.
Case 1 was that of 37 years old female and Case 2 that of 23 years old female. They both were epileptic with psychotic disorders i.e. hysteric personality, hypochondria, disphoria and dementia. There was an episode of grand mal seizures in childhood in both of them, and the seizures became habitural since the ages of 23 years (Case 1) and 13 years (Case 2).
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