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はじめに
すでに筆者の論文1,2)でふれたように,重症心身障害は,もともと医学から発想された概念とはいえない。むしろ重度の精薄と重度の脳性マヒをダブルに持つため,日本という特殊な風土の中で,医療と福祉の双方から疎外され続けていた悪条件下に発展した社会的要請,とくに重症児を持つ家族たちの強い要請と運動にその主体性があった。この非情な現実は最近,問題視されつつある"難病群"にもあてはまる。なぜなら筆者の見解3,4)によれば,"難病"とは原因不明,治療法もなく,長期療養を要する奇病または特殊疾患というより,むしろそれらを含めて,原因の明,不明,治療法の有無を問わず,社会復帰が極度に困難か不可能な上,長期,慢性に経過する状態像を意味し,したがって医療と福祉の両面から緊密に対応するほかはないからである。しかも"難病群"は,医療からも福祉からも疎外され続けているという現実をふまえた医学的・社会学的・福祉学的な綜合概念にほかならぬからでもある。この視点からすると,重症心身障害も,まさにこの範疇に属する。
本特集号は,それを受けて立った医学とその周辺領域に重点をおきつつ,現時点における一応のまとめといえる。その詳細は各論にゆずるが,筆者は,まさに重症心身障害児にほかならぬ胎児性水俣病とその周辺の実態把握から出発して,この課題をより広い視野から考えてみたい。
The concept of severely double handicapped children has primarily been originated not from medical side but from social aspect. The reasons are as follows: 1. Since those children in the past had been segregated not only from hospitals, institutions and welfare system in general, the parents who had been considerably suffered from those children in socioeconomico-psychological sense had created this concept and promoted the movements to establish those systems; 2.
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