Japanese
English
特集 平衡機能と姿勢反射
内耳の解剖と生理
Anatomy and physiology of the inner ear
原田 康夫
1
Yasuo HARADA
1
1広島大学医学部耳鼻咽喉科学教室
1Department of Otolaryngology, Hiroshima University School of Medicine
pp.649-660
発行日 1974年8月10日
Published Date 1974/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903645
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はじめに
内耳は,前庭器と蝸牛により構成されている。このうち蝸牛よりも前庭器の方が系統発生学的には古い位置に属し,クラゲなどでは原始的な平衡器として耳石器のみが存し,魚類の中のヤツメウナギでは外側半規管はないが前および後の垂直半規管が出現する1)。またカエルでは蝸牛はなく球形嚢が平衡器としての役目のみならず音の受容も兼ねそなえている。さらに鳥類では蝸牛は回転をもたず感覚上皮はbasilar papillaと称され,感覚細胞がぎっしりと並んでいる2)。哺乳類に至って蝸牛は回転を有するようになり,動物によりその回転の数も異なる。したがって,動物により前庭器,蝸牛の形態はかなり異なるが,その機能としては前庭器は身体の平衡の受容器で,蝸牛は聴覚をつかさどる器官である。
今回は内耳の解剖と生理の最近の進歩につきとりあげるのであるが,前庭器のうち耳石器は佐々木教授が分担され,私は蝸牛の簡単な構造の解説と主に半規管の形態と機能につき述べる。形態については走査電子顕微鏡による観察に基づき解説し,さらに機能については,主にカエルの半規管をリンゲル内にて摘出し,その生理学的機能を追求したので,内外の文献を加えて考察を加えてみた。
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