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特集 第9回脳のシンポジウム
主題:代謝性神経筋疾患
Tay-Sachs病
Tay-Sachs disease
鈴木 義之
1
Yoshiyuki SUZUKI
1
1東京大学医学部小児科
1Department of Pediatrics, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.1044-1050
発行日 1973年12月10日
Published Date 1973/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903569
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Ⅰ.歴史的展望
1881年英国の眼科医Tay1)が四肢筋緊張低下のある乳児に,特異な眼底変化を見出し,おなじ眼底変化を6年後に米国の神経科医Sachs2)が視力障害および知能障害のある患児で報告し,これを家族性黒内障性白痴amaurotic family idiocyと呼んだ。以後の症例数の増加とともに,これらはすべて一つの先天性遺伝性の疾患であると考えられるにいたり,Tay-Sachs病と呼ばれるようになった。組織学的に神経細胞の空胞化が認められ,なんらかの蓄積症であると想像されていたが,その本体は長年不明であった。Klenk(1939〜42)3,4)が本症の脳からシアル酸を含有する新しい脂質を抽出しgangliosideと命名して以来,生化学的検討が急速にすすみ,gangliosideは単一のものでないこと,その中の特殊な分画(GM2-ganglioside)のみの増量があることがわかり5),1960年代になって構造決定もなされた6〜8)。さらに1969年Okada & O'Brien9)はこのganglioside蓄積のもとになると考えられる酵素障害としてhexosaminidase Aの欠損を見出し,本症の病態生化学についての知見は以後飛躍的に発展した。
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