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【要 旨】
目 的:肩関節前方脱臼に合併する関節窩骨欠損は25%以上の大きさが危険域であることが知られている.近年,13.5~20%の骨欠損(準危険域)は再脱臼しないが生活の質(QOL)を低下させるという臨床報告が出された.本研究の目的は,Hill-Sachs損傷を評価する際にこの準危険域が存在するかどうか調査することである.
対象および方法:反復性肩関節前方脱臼に対して鏡視下Bankart修復術を受けた25%以下の関節窩骨欠損を合併する50例(平均年齢27歳)を対象とした.術後平均28ヵ月で調査を行った.全例とも軌跡内損傷である.Western Ontario Shoulder Instability Index(WOSI)スコアとRoweスコアで臨床評価した.三次元CT画像上でHill-Sachs intervalを計測し,関節窩軌跡幅で除したものをHill-Sachs占拠率と定義した.関節窩軌跡はHill-Sachs占拠率の大きさによって四つのzoneに分けた.すなわちzone 1は25%未満,zone 2は25~50%,zone 3は50~75%,zone 4は75%以上である.
結 果:再脱臼率は6%であった.WOSIスコアもRoweスコアも術後有意に改善した.zone 4にあるHill-Sachs損傷(辺縁軌跡損傷10例)のWOSIスコアはその他の損傷(中央軌跡損傷)に比べ有意に低かった.この10例のうち5例は術前のWOSIスコアと同じ程度に低い値であった.
結 論:軌跡内損傷の患者は,再脱臼しないがWOSIスコアが有意に低い辺縁軌跡損傷(Hill-Sachs占拠率が75%以上)とそれ以外の中央軌跡損傷(75%未満)の二つに分けられた.
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