特集 うつ病の臨床
第63回日本精神神経学会総会シンポジウム
指定討論
矢崎 妙子
1
1東京医歯大神経科
pp.984-985
発行日 1966年12月15日
Published Date 1966/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201117
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私がご発表を拝聴してまず共感をもちました点は,先生がうつ病の状態像を対象関係の障害として把握されたことであります。分裂病の対象関係とくに対人関係については現象学的にも医学的人間学的にも多くの研究者がそれに焦点をあわせ研究し,興味ある成果をあげています。しかしうつ病では対象関係の障害に重点をおいた研究は少ないと思つておりました。ところがさまざまな要因のからみあううつ病の状態像を「周囲との連帯感ないし一体感の喪失」とみごとに解明されました。このことはTellenbachがうつ病者はSein für andere(他のための存在)であり,Sein für sich(自分自身のための存在)として生きていない,いいかえますと,「ひとりの孤独な存在」として生きぬく力をもつていない,つねに他との連帯感や一体感という心理的な支えを必要としていると述べていることとも関連して大変に興味深く拝聴いたしました。
私はここでこの「連帯感ないし一体感」の問題にしぼつて討論させていただきたいと思います。
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