特集 精神療法の技法と理論—とくに人間関係と治癒像をめぐって
第3回日本精神病理・精神療法学会シンポジウム
指定討論
武田 専
1
1武田病院
pp.494-496
発行日 1967年7月15日
Published Date 1967/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201220
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本シンポジウムの指定討論者としての私の立場は,精神療法的な病院を実際に運営している者として,理論よりはむしろ実際面から病院精神療法という見地に立つて発言者の方々の発表内容を補足し,かつ若干の質問をせよということであると了解している。
従来,わが国における精神科病院の精神医療の問題は生活療法やrehabilitationのかたちで病院精神医学の分野でとりあげられるのみで,精神分析ないし力動的な立場からの病院精神療法のこころみは,われわれのほか,一,二をのぞいてほとんど報告されていない現状である。一般の精神病院においては,初めから少数の治療者と多数の患者たちとの治療関係を基本とする,集団的な取り扱いから出発し,分裂病を中心として表層的な社会的適応の回復などに重点がおかれ,ともすれば個々の患者の微妙な個性や精神力動の推移に注意が向かぬきらいがある。これに反し,われわれの立場は,患者個々の精神内界の変化を重視する,神経症のintensiveな外来個人精神療法から発展し,医師・患者の1対1の関係に注目する閉鎖的な交渉様式を基本構造としているため,病院全体を精神療法的に管理するには,治療者・患者関係の構造の修正とそれに伴う治療技術や理論の修正が必要となってくる。わが国の精神医学の健全な発達を考えるとき,われわれは日本的な現実に,より積極的な適応をすべきであるが,一般精神病院においてもさらに積極的に,個人精神療法の知識と経験を集団的な扱いや病院治療に導入するこころみが望ましく,このような統合を行なう場は,この精神病理・精神療法学会を措いて他にないと考えられる。
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