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特集 神経病理(第13回日本神経病理学会学術研究会より)
特別講演
閉鎖性外傷性脳損傷の臨床,病理形態学および病態生理
Klinik, Pathomorphologie und Pathophysik der gedeckten traumatischen Hirnschaden
貝谷 壽宣
1
,
G. Peters
2
1岐阜大学医学部神経精神医学教室
2Max-Planck-Institut fur Psychiatrie, Deutsche Forschungsanstalt fur Psychiatrie
pp.206-215
発行日 1973年4月10日
Published Date 1973/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903489
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私の講演は,閉鎖性外傷性脳損傷の解剖,臨床そして生理機構の陳述だけに限定される。開放性脳損傷は考慮しない。脳硬膜の態度が鑑別診断の区別点とみなされる。すなわちもし脳硬膜が損傷しておれば開放性脳損傷であり,それが無傷であれば閉鎖性脳損傷である。閉鎖性外傷性脳損傷は大部分鈍力または広範な平面的外力作用の結果生ずる。ダッシュボード,ハンドル,支柱そして道路に頭を打ちつけるような交通事故(主に自動車事故)や,まれには職業的な事故の結果として,私たちは残念ながら日常この閉鎖性外傷性脳損傷に出会う。ドイツでは年間18,000から20,000人の交通事故死がある。大多数の交通事故で頭蓋脳損傷が生ずる。
私たちは一次性と二次性外傷性脳損傷を区別する。前者の本来の脳損傷は頭蓋への外力作用の直接の結果であり,後者は壊死や出血を伴う局所性または全身性の循環障害を生ずる環流障害によったり,また肺の酸素交換障害(気道損傷,中枢性呼吸障害)の結果生ずる脳の一般的な酸素不足による外傷性浮腫のような複雑な過程の結果である。一次性および二次性外傷性脳損傷の鑑別は,理論的だけでなく実際的にも興味がある。前者は不可避であるが,後者は時期相応の治療によって避けられたり軽減されうる。
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