Japanese
English
特集 慢性進行性神経疾患・1
中毒
16年後の水俣病の臨床的・疫学的研究
Clinical and epidemiological studies of Minamata disease in 16 years after onset
原田 正純
1
Masazumi HARADA
1
1熊本大学医学部神経精神医学教室
1Dept. of Neuropsychiatry, School of Med., Kumamoto Univ.
pp.870-880
発行日 1972年10月10日
Published Date 1972/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903438
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
環境汚染によるメチル水銀中毒,すなわち,水俣病が発見されてから16年になる。水俣病の症候学的研究は徳臣らによって確立され1,2),さらに,これらの患者の慢性期(長期経過後)の臨床像については教室の高木3),立津4),村山ら5)の報告で明らかにされてきた。また,昭和40年には新潟において第二の水俣病が発生し,椿らによってその病像は一層明らかにされたのである6,7)。しかしながら,このような広範な環境汚染によるメチル水銀中毒はほかに類がなく,その実態すなわち,人体にどのような範囲でどのような程度の影響を及ぼすかということについてはまだ明らかにされていない。われわれがその実態が明らかになっていないと考える根拠は次のような理由による。
1)われわれが水俣病として最近までみてきた患者たちの症状は等しく重篤で,しかも末梢性知覚障害,共同運動障害,求心性視野狭窄,構音障害,聴力障害,振戦などが70〜100%の高率に認められており1,2),あまりに症状がそろいすぎていること。すなわち,非典型例や軽症例を除外しているのではないかということ。
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.