連載 水俣病から学ぶ・2
公害の原点としての水俣病
原田 正純
1
1熊本学園大学社会福祉学部
pp.138-142
発行日 2003年2月1日
Published Date 2003/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100811
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
水俣病はなぜ公害の原点か
水俣病はしばしば「公害の原点」と言われている.それは事件が単に悲惨であったとか,規模が大きかったとか,最初に起こった公害であったからという理由だけではない.工場廃水に含まれた化学物質が環境を汚染し,その結果,食物連鎖を通じて起こった中毒事件であったこと,さらに胎盤を通過して胎児に中毒を起こしたことであった.これは人類が始めて経験した中毒であった.水俣病以前に人類が経験した中毒はいずれも,職業病や事故など直接ばく露による中毒であった.
「公害の影響による疾病の指定に関する検討委員会」(厚生省)は1969年12月17日,「政令におり込む病名としては“水俣病”を採用するのが適当」としている.その理由は,国内・国際的にも文献上にも広く用いられていること,公害的要素が含まれていてこのような疾病は世界のどこにも見られないことを挙げている.公害的要素とは,環境汚染と食物連鎖というキーワードを指している.筆者はこの2つのキーワードの要件を満たすものを「水俣病」と呼んでいる.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.