連載 グローバリゼーションと健康・4
水俣病のグローバルな視点
原田 正純
1
1熊本学園大学社会福祉学部
pp.308-312
発行日 2005年4月1日
Published Date 2005/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100071
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グローバルな視点「水俣学」
2002年から熊本学園大学で「水俣学」を提唱して授業を開始している.本年度からは福祉環境学科として修士・博士課程も立ち上げている.それほどに水俣病にこだわるのは,1956年に正式発見されたこの事件には重要なグローバルな問題を含んでいるからであり,また,地域の大学としてはこの地域最大の問題に真正面から取り組み,地域に還元するある種の責任があると考えているからである.水俣病におけるグローバルな視点とは,その事件が持つ普遍性であり,国際性である.筆者はインターナショナルという概念よりユニバーサルという概念に近いと考えている.
最近,グローバルな環境問題といえば国際的問題,地球的環境問題と読み替えられることが多いが,それは最近の公害問題から環境問題へと転換する風潮と無関係ではない.以前,筆者は水俣病を鏡にたとえて,「水俣病は鏡である.この鏡はみる人によって深くも,平板にも立体的にもみえる.そこに,社会のしくみや政治のありよう,そして,自らの生きざままで,あらゆるものが残酷に映しだされてしまう」と書いた1).
水俣学は水俣病の医学的な解説でも,その知識を普及するものでもない.水俣病の持つ普遍性は医学・医療ばかりでなく,法律,行政などあらゆる分野において見られるのである.さまざまな分野の学問や立場を水俣病事件に映してみて何が見えるかという,エキサイティングな知的作業である.それはグローバルな視点を持つ学問,いのちを中心に現場に学ぶ学問などを模索することである2).
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