Japanese
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臨床的に単純な精神薄弱と診断され,剖検して初めて日本脳炎後遺症を疑つた1例を報告した。
78歳の男子,11歳の夏,高熱,意識障害で発病し,以後性格,知能とも一変した。痴呆状顔貌,小児様言語,記憶力低下などみられ,放浪,家人を脅迫の理由で20歳で入院。痴愚程度の知能低下,子供つぽい好機嫌さ,粗野,乱雑,不潔,動作緩慢などの状態は死亡時までつづいた。けいれん発作はなかつた。65歳より高血圧。69歳で軽い卒中発作があり,右片麻痺を残した。78歳で急死。66年7月の経過。
神経病理学的には,両側視床,黒質,アンモン角に病変の主座がある。巣性の侵襲で,視床では内髄板,centrem6dianを中心に含んで帯状の病巣,黒質では中央部に限局し,アンモン角はSommer扇部が選択的におちている。病変の性状は神経細胞の脱落とグリアー間葉性成分の増殖,神経細胞の石灰化と石灰集塊巣の出現,2核神経細胞などで特徴づけられているが,最も目立つ所見は,地図状に拡がる淡明巣の存在で,視床で際立ち,黒質では境界が不鮮明となつている。
大脳皮質では小蒼白化巣と瘢痕巣および小血管の硝子様変性をみるとともに,全脳皮質の髄鞘構築が乱れていた。被殻のstatus marmoratusと赤核および動眼神経末梢線維のグリオーゼをみた。
本例の病理学的特徴として,病変が間脳一中脳部に高度にみられ,大脳皮質には乏しいことを強調し,急性期の限局性壊死を思わせる淡明巣が,67年の経過後もなお存在していることを示し,その病理診断上の意味についてのべた。最後に臨床症状と疫学史のことに少しくふれた。
A 78 year-old man who had been hospitalized for 57 years in Matsuzawa Hospital because of personality changes and mental deficiency was proved to be a suspected Japanese B Encephalitis neuropathologically. The patient was afflicted "meningitis" of unknown cause at the age of 11 (August, 1901) with high fever and delirious state which lasted several days; and showed marked personality changes and feeblemindedness after that.
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