Japanese
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特集 脳のシンポジウム
主題—脳死をめぐつて
臨床面よりみた脳波の消失
Isoelectric Electroencephalogram from Clinical Point of View
竹内 一夫
1
Kazuo Takeuchi
1
1虎の門病院脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Toranomon Hospital
pp.23-32
発行日 1970年4月25日
Published Date 1970/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903095
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はじめに
「脳波の消失」という現象は一応大脳半球の機能が喪失したことを示すものである。したがつてわれわれは臨床的に種々の原因によつて深い昏睡に陥つた症例において,しばしば平坦な脳波を記録することがある。そして「脳波の消失」が一定時間を超えて継続するような場合には,大脳半球の機能の回復はまず不可能であると判断し,その症例の予後は絶対に不良であると考えている。ただ,しかしこのような状態に陥つてからでも,心拍動停止・自発呼吸停止・瞳孔散大・対光反射消失という古典的な死の認定基準によつて決定される現行法律上の死亡,すなわちいわゆる心臓死に至るまでには,なお一定の時間的へだたりがあることが多い。
そのためわれわれの約10年間に扱つた臨床症例の中から,とにかく「脳波の消失」という現象がみられた20症例を選び,脳波所見,神経徴候およびvital signつまり脈拍・呼吸・体温などを比較検討した。これらの症例の主なものは脳腫瘍・脳の血管性病変・頭部外傷などの脳に一次的の病変を有する脳外科的疾患であり,さらに各種の原因による脳無酸素症などによる昏睡症例が含まれている。
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