Medical Scope
アクセレレイションの消失
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.80
発行日 1982年1月25日
Published Date 1982/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205964
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NST,つまりnon-stress test(ノンストレス・テスト)については皆さんは十分に理解し,日常の診療に使われていることでしょう。この分娩前の胎児心拍数モニタリングは胎児が元気かどうかを診断する方法として,現在日常に用いられている診断手技のうちではもっとも優れたものといえます。このNSTの記録をよむときに,胎児が元気であることを示す所見に,アクセレレイションaccelerationという一過性に出現する胎児の頻脈があります。このアクセレレイションが胎動と同時に出現したり,あるいは軽い子宮収縮と同時にみられるときは,胎児が非常に元気であると診断される根拠になっています。したがって,アクセレレイションがよく出現する胎児は非常に元気なので,それ以後の1週間にはほとんど胎児死亡となることはないのだという意見もあるくらいです。今まで,これほどまでに確実に胎児が元気であるということを証明する方法がなかったことから,このNSTは非常に優秀な胎児診断手技として用いられているのです。
さて,このアクセレレイションという一過性の胎児の頻脈が,胎児が元気であることを示すひとつのバロメーターなら,今までアクセレレイションがなかった胎児にアクセレレイションが出現してきたときは,胎児が元気になったと考えてよいのでしょうか。
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