特集 肝脳疾患・Ⅰ
実験的肝脳疾患に関する研究—特に脳の形態学的変化について
恩村 雄太
1
1北海道大学医学部病理学第二講座
pp.339-355
発行日 1959年1月20日
Published Date 1959/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901678
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緒言
肝と脳との相互的関係に就いては遠くHippoc-rates及びGalenの昔から識者の注目するところであつたが,肝障害の直接脳に及ぼす影響が大であるという研究発表は19世紀に於けるLaydenの"中枢神経系における肝性中毒"という論文に始まり,降つて1912年Wilson1)が家族的疾患の一つとして,肝硬変と同時にレンズ核に変性の起る疾患を記載,更にEconomo,Schilder2),Spielmeyer3)は1920年この疾患とWestphal,Strümpellの仮性硬化症とは臨床的には異つた症状を呈するが,組織学的には密接な関係を有し,甚だ近似したものがあるということを指摘,Wilsonの仮性硬化症と称した。
爾来之等疾患を中心として,更に肝と脳とが障害され,然も両者の間に機能的関連が認められるすべての疾患を肝脳疾患となし,近時特に之等に関する研究領域が開拓されて,臨床症状,病理形態,代謝障害,組織化学,循環障害等の各方面から詳しく研究され,種々の興味ある新事実が知られるようになつたが,相互の移行,本態的な共通性に関しては未解決の点が多い。
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