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特集 神経病理—第10回日本神経病理学会総会より
変性・代謝障害
銅投与昏睡犬脳の形態学的変化—神経膠の態度について
Morphological Changes of Neuroglia in Hepatic Coma induced by Injection of Copper in Dogs
恩村 雄太
1
,
佐藤 利宏
1
Yuuta Onmura
1
,
Toshihiro Sato
1
1北海道大学医学部病理学教室第二講座
1Department of Pathology, Hokkaido University School of Medicine
pp.327-337
発行日 1970年7月5日
Published Date 1970/7/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903138
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Ⅰ.緒言
近時Wilson病の本態は,常染色体性単純劣性遺伝による先天性代謝異常であり,種々の臨床像および病理学的変化は,この根底にある先天性の代謝障害に基づく二次的な現象の結果と解されている。Wilson病にみられる神経膠,神経細胞,基質などの,発生部位を含めての特有な脳の形態学的変化は,いわゆる肝脳疾患脳にほぼ共通な所見として認められているが,その発症の由来に関してはいまだ不明の点が数多く残されている。薬物もしくは手術操作などにより,実験的に肝性昏睡を起させた動物脳では基質の節状構造,軟化巣,脱髄巣,神経細胞の重篤な変化などが脳幹部を中心として発現することは数多くの実験で実証されており,神経膠に関しても,Alzhemier Ⅱ型神経膠の出現は強調されている。しかしWilson病にみられるごときAlzhemier Ⅰ型神経膠やOpalski細胞などに関しては触れられていない。
Wilson病では,血清セルロプラスミン値の低下,血清銅の減少,アルブミンと粗に結合した血中銅の増加,尿中排泄銅の増加,臓器,とくに肝,脳,腎などにおける著しい銅沈着などをみることから,銅代謝異常が指摘され,Bean1)らは,本疾患の組織学的変化は慢性銅中毒症の結果であろうと推定している。
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