特集 肝脳疾患・Ⅰ
肝脳疾患と金属
茂在 敏司
1
1東京大学冲中内科
pp.292-299
発行日 1959年1月20日
Published Date 1959/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901674
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肝脳疾患について
猪瀬は肝疾患の脳の病理組織学的検索から肝レンズ核変性と可成りの類似点をもちながら尚之と明らかに区別されねばならない症例群をあげ,肝脳変性疾患特殊型としてまとめあげた。従来本邦において肝レンズ核変性として取り扱われたものの中にかかる症例の含まれている可能性のあることを示唆したのである。一方椿等は臨床的経験から特殊な意識障害発作を繰り返す肝疾患に注目し,肝脳疾患と呼ぶことを提唱した。
Haurowitz以来肝レンズ核変性について報告された銅代謝異常が剖検材料について又臨床的に遂時確認されるに及んで此の疾患の病因論的特殊性が明白となつて来た。教室においてもこれらの報告を追試確認すると共に,此の疾患における中枢神経系障害は銅の沈着による二次的現象であることを認めた。更に著者等は椿等の臨床的定義に従つて特異な意識障害発作を起す肝疾患症例について,肝を中心として病理組識学的に検討した結果,少くとも病理形態学的には必ずしも一定の特異的変化を認め得ないことを明らかにしだ。猪瀬は彼の症例について変化した神経膠細胞或は所謂Leber glia中にカルミン陽性の封入体の存在を述べたが,教室での検討によると此の所見も変化の質的特異性を示すものではなく,一般肝疾患にも程度の差はあつても共通の所見が見られるもののようである。
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